桜の季節になった。
河川敷の桜は、少しだけ咲くのが遅い。
それでも満開になる前から、花見客で賑わっている。
わたしは、一人で桜を見るのが好きだ。
だから、夕方にそっと観に行く。
子供たちは遊び足りないのか、まだ駆け回っている。
楽しい声が響く。
なぜだかわたしは落ち着かない。
人がまばらになった広場で、桜だけが存在感を増していく。
桜は、何も言わない。
わたしの中をただ、記憶が通り過ぎていく。
学生時代の、入学式。
幼稚園の卒園式へ向かう朝の、
母の手のぬくもり。
桜はどこか甘くて、切ない。
今年も、美しく立っている。
