まとまった時間が欲しい。
つい、思ってしまう。そんな時間、永遠に来ないのは分かっているけれど。
リタイヤ後は、時間を持て余すだろう。
でもこれは、今しかできないことをやるための時間についてだ。
本当は…知っている。隙間時間でもできる。
でもそうじゃない。どっぷり浸かりたい。
今しか書けないものがある。
今しか見えないものがある。
自分だけの感覚に浸って、恍惚とした世界を堪能する。
まるで濃厚生チョコレートを口に入れたような、甘美な香りに満たされる。
余計なことは考えず、自分の言葉と向き合う。
なんて贅沢。これぞ至福の時間。
…ふと、我に返る。
右手に包丁。左手には玉ねぎ。
みじん切りにするほどに、目には涙が滲む。
泣きそうになりながら、思う。
果たしてわたしは、本当にまとまった時間が欲しいのだろうか?
実際はどうだ。
連休中、創作に没頭しただろうか…。いや、ただ浮かれて時間を無駄に使っただけ。
多分そうじゃない。
時間より、濃密な一瞬が欲しい。
一瞬でいい、自分の感性を頭からつま先まで全身に行き渡らせて、たった一つの純度100%の言葉が欲しい。
…微塵切りの手が止まる。
やはりチョッパーを使おう。少しでも時間短縮。
結局今日も進まない。
それでも、書く。
書くしか解決しないから。
1日1語、絞り出す。
まとまった時間なんて、永遠に来ない。
でも、濃密な一瞬は意外なタイミングで訪れる。
きっとそれは、微塵切りにされた玉ねぎの中にある。
時間
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