せわしない朝。
みんな足早に職場へと歩みを進める。
駅の改札からは、まるで人造人間が出荷されるみたいに次々と人が吐き出されていく。
信号待ち、無機質な顔が立ち並ぶ。
ふと、不安げな顔がある。
これから向かう世界では、半分自分を殺さなければならない。
そこは感情の死と隣り合わせの、いわば心の戦場だ。
昨夜の時間がよみがえる。
好きな推しの動画を夢中で観ながら、現実から自分を引き離していった。
その甘美な名残が、まだ身体に残っている。
これから殺伐とした荒地へ向かうというのに、往生際が悪い。
自分を押し殺してまで、果たして何のために戦っているのだろう。
ときどきわからなくなる。
今日も自分をすり減らし、社会に身を注ぐ。
帰属という安心を得るために。
空っぽの自分に社会を詰め込んで、まるで自分であるかのように錯覚する。
信号が青に変わる。わたしは一歩を踏み出す。
一員であり続けるために。
